俳句の作り方  鶴の俳句

     月雫鶴の幻聴はかなくて  伊庭直子いばなおこ

    つきしずく つるのげんちょう はかなくて

     この句は2024年1月号の『河』に掲載されました。

 

 

     鶴が冬の季語。

    「ナベヅル・マナヅルは秋にシベリアから飛来し田や沼で冬を越す。

    丹頂は北海道東部で年間を通して生息するが、ほかの鶴同様冬の季語として扱われる。

    (俳句歳時記 冬 角川書店編)

 

 

     句意を申し上げます。

    満月の光が雫のように滴り落ちています。

    そんな夜、鶴の声が聞こえてすぐ消えました。

    でもここは大阪平野。

    鶴の声が聞こえるはずありません。

    ああ、幻聴です。

    それにしてもハッキリ鶴の聲だとわかるほどの幻聴でした。

    月雫鶴の幻聴はかなくて

 

 

     ところで鶴の聲は「クオン」と聞こえたりしませんか?

    角谷昌子かくたにまさこ の俳句にこんなものがあります。

     海照るやくおん久遠と鶴のこゑ

    うみてるや くおんくおんと つるのこえ

    北海道東部の海岸に私(作者)は立っています。

    陽ざしに海が光ってまぶしい。

    すると鶴の声が聞こえてきました。

    よく聞くと「久遠」と鳴いているではありませんか。

 

 

     久遠とは永遠や無限の時間を意味します。

    仏教で久遠は時間の始まりも終わりもない永遠の存在を指すことが多いです。

    鶴の端麗な姿から無限の美を想像した作者。

    素晴らしい!

 

 

     角谷昌子かくたにまさこ は1954年生まれ。

    東京都出身。

 

 

     

     俳句の作り方  鶴の俳句” に対して1件のコメントがあります。

  1. 大谷元秀 より:

    あくまで私の私見ですが、角谷昌子氏の俳句より私は伊庭さんの句の方が心を動かされました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です